「マチュピチュの近くに新空港建設」といったニュースを最近目にして、こんな建設プロジェクトがあったなんて!と思わず私はビックリしてしまいました。実はこのプロジェクト自体はもう何年も前からあったらしいのですが、ここ最近になって工事着手かといったニュースが出てきたようなのです。いろいろと気になったのでさっそくこの新国際空港建設について少し探ってみました。
Photo by Tanathip Rattanatum o-dan
チンチェロ国際空港建設工事の概要
空港建設地は、クスコから30km程北西にあるウルバンバ郡のチンチェロという村。多くの先住民も居住しているのどかな感じのところです。
この地図を見てみると、左上緑部分のアグアスカリエンテスというところがマチュピチュのある辺りです。チンチェロのすぐ右下辺りに現空港のあるクスコがあります。ですので建設される新空港はマチュピチュ近くの空港というよりもクスコ第2の空港といった感じがします。ただ、このチンチェロ国際空港は現在のクスコにある空港よりもだいぶ規模の大きなターミナルとなるようで、おそらく完成すればクスコ第1の空港となり、ペルーでもリマのホルヘチャベス空港に次ぐ第2の空港となる模様です。
もし国際空港ができれば、リマもクスコの市街も経由することなく、南米各国やアメリカなどからダイレクトにマチュピチュ近郊まで入ることが可能になるでしょう。
この空港ができることによって大型旅客機が着陸可能となり、ペルーへの観光客は増加、現地住民たちの新しい職も生み出されることになります。
空港建設は当初2015年に着工し、2019年竣工、そして2020年よりオペレーションを開始する予定だったようです。
しかし2019年11月に工事契約が締結され、5年間の工事期間を経て2024年にオペレーションが開始されるとのニュースが出ました。※2019年11月追記
これまでに建設予定地には地ならしをするための重機などが搬入され工事の初段階には入っていたものの、空港建設反対派の人たちとの論争からもまだ解放されておらず、反対を押し切っての着工となっているようです。
新国際空港建設反対派による抗議の内容とは
マチュピチュへの起点がクスコではなくチンチェロになるとどういったことが考えられるでしょうか。
まずチンチェロ付近には現在、大勢の観光客を受け入れられるほどの宿泊施設や飲食店などがクスコほど揃っているとは思えません…。2023年までには年間600万人の観光客を受け入れる方向でいるとの発表もあるので、きっと新空港建設に合わせて宿泊施設や飲食店なども爆発的に増えていくのでしょう。
しかし大自然の中ののどかだった村が変貌してしまうのもなんだか現地の人たちが少し気の毒な気もしますね。
実際のところ反対派による抗議文の内容としては、空港建設地の見直しの要求なんだそうです。理由は予定地の土壌が建設工事に向いていないことや、住民の飲料水の供給にも支障がでるなどといったことなど。その他飛行機の騒音や建設にともなう自然環境の破壊、交通量が増えることによる公害、そういった数々の懸念も同時に抱くことにもなるでしょう。
とはいってももう工事が開始されます。こういった問題を抱えながらも前向きに観光へ力を注いでいくしかないのでしょうね。
また、観光収入が増えてもそのお金は国(文化庁)のものとなり、観光客がたくさん来てどんなに村が賑わっても、現地の住民たちが経済的に潤うわけではないんですよね。職が増えるというメリットはあるかもしれないですが、収入がよくなって生活レベルが上がるかというのとはまた別の話だと思います。
首都のリマから観光客が遠ざかる?新空港建設で考えられる懸念とは
現地の人たちだけではありません。
マチュピチュ観光にはインカ時代の人たちが辿った遺跡までの道をキャンプしながら歩いていくインカトレイルなどの大人気コースがあります。当時の時代に思いを馳せ、何日もかけてマチュピチュを目指すというロマンのあるコースなのに、もしそこに飛行機の轟音が聞こえてきたら…?なんだか興ざめしてしまいそうですよね。
チンチェロ空港建設地の場所を地図で見る限り、マチュピチュのすぐ近くではないのでトレッキング客の迷惑になるほどではないかもしれませんが、なんとなく飛行機の騒音って大丈夫なのかな?というのは気になるところですよね。
インカトレイルではないですが、節約コースのスタンドバイミーロードでマチュピチュまでハイキングをした時の体験記をこちらでもご紹介しています。
またペルーでは近年、SNSがもたらした知られざる絶景スポットなどがじわじわと人気になってきていて、さらに美食の国としても徐々に注目されてきています。目下ペルーはマチュピチュだけじゃないんだよと積極的に様々な魅力をアピールしているにもかかわらず、マチュピチュばかりに観光客を送り込もうとしているのがちょっと不思議だなと個人的には思います。
最近では「オーバーツーリズム」などと言われ、過剰に観光客が押し寄せて現地の人たちが悲鳴をあげている世界の観光地があるのも問題になっていますよね。日本で言えば京都や鎌倉などがその都市にあたるそうです。マチュピチュを訪れる観光客が多すぎて入場規制までされるようになっているというのに、なんだかマチュピチュ近郊もそうなりかねないのではないかと少し不安がよぎってしまいます。
さらにリマやその他の地方都市への観光客が遠ざかってしまうようなことにもなりかねません。おそらくリマに行く観光客は減少し、何かしらの経済的ダメージを受けることになるのではないでしょうか。
クスコの現空港の拡張とかではなく、わずか30kmの場所に反対派を押し切ってまで新空港を建設する必要って何なのかなと思うところもあります。新空港ができた後の旧空港がどうなるかは、私が調べた範囲ではまだわかっていません。
チンチェロ空港ができてもマチュピチュまでの移動は変わりはない?
新空港建設に関する私の想像と意見をつらつらと書いてしまいましたが、実際のところ今後どうなるかはわかりません。
しかし現に空港建設に反対している現地の人も多く、その反対派の抗議を振り切っての着工であるのは事実です。一方私の周りで、クスコを愛するペルー人の友人はこの空港建設はペルーがより発展してくれることを期待しているようで、楽しみにしているそうです。
【参照記事】
Chinchero, el polémico aeropuerto que Perú va a construir cerca de Machu Picchu
Inicia construcción del nuevo aeropuerto en Machu Picchu a pesar de las protestas contra el proyecto
当記事のポイントは大きくまとめると以下のようになります。
- マチュピチュ近くに建設されると言われている国際空港の場所はチンチェロという村でクスコからわずか30km
- 2024年にオペレーションが開始され、観光客が利用できるようになる
- 工事契約を締結。しかし反対派との問題もかかえたままの状態
- 空港ができたからといって現地の人が経済的に潤うわけではない
- 新国際空港ができることにより、リマや他の都市への観光客が激減する可能性も考えられる。(個人的見解)
- マチュピチュへキャパシティを超える観光客が訪れ、オーバーツーリズム問題を抱えることになるのではないかと懸念(個人的見解)
チンチェロ国際空港は現在のクスコの空港に比べるとマチュピチュへほんの少しだけ近くなるものの、かといってそんなにマチュピチュの近くではないと個人的には思っています。空港ができてもアグアスカリエンテスまでの移動は必要ですし、アグアスカリエンテスからマチュピチュ遺跡までのバス移動なども必要なのは変わりないでしょう。